市立米沢図書館蔵の書籍 89年ぶりに沖縄へ一時里帰り !!

当館所蔵の郷土資料の中の特別コレクション「米沢善本」と「林泉文庫」の中には、沖縄に関わる珍しい書籍が入っていましたが、今回、沖縄県うるま市で開催される〝「伊計村遊草」等原本資料展〝に貸し出されることになりました。    
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なぜ東北の市立米沢図書館に沖縄の書籍が入っているのか、不思議なことですが、これは市立米沢図書館第二代館長で、上杉家記編纂所総裁を勤めた歴史家・伊佐早謙氏のお陰です。伊佐早は、第二代沖縄県令として沖縄の治世に尽力した上杉茂憲(最後の米沢藩主)の事蹟を調査するため、大正13年(1924)に沖縄を訪問しました。その際、漢詩も好きであった伊佐早は琉球漢詩に深く興味を持ち、漢詩関連の書籍を多く買い求めたものと思われます。『香草斎詩註』には、大正13年に買い求めたことと、林世功遺本を宝として書室に常置することを記しています。また帰国後は沖縄の漢詩を独自に編集した「琉球文伝」(『沖縄県史料』に収録)も作成しています。
 沖縄の漢詩に惹かれた伊佐早によって米沢にもたらされた書籍は伊佐早の書庫「林泉文庫」に入り、その後上杉家を経て市立米沢図書館の蔵書となりました。そして、先の第二次世界大戦の戦禍を免れ、今回89年ぶりに一時里帰りすることになったのです。

沖縄への貸出に関し、取扱い等には万全を期しますが、万々が一に備え、順番を変更して今回の助成事業でデジタル化を行いました。そのデータを利用して複製本も作成されるようです。デジタル化はインターネット公開の利便性と共に、災害等に対する資料の保存に有効な点を改めて実感したところです。